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Project
Story
01 関係性をつくる 住民がつながり、まちが自立する
(MEGURU STATION)

日々のごみ出しをきっかけに、地元を支えている充足感や多世代の交流を生み出していきたい。2018年秋、一般ごみの100%資源化およびコミュニティの活性化をめざし、宮城県南三陸町にて行われた実証実験。その拠点となったのがアミタが提案・運営を担った『MEGURU STATION』でした。

Relationship

南三陸町民のためにできること

森があり、山があり、海がある。豊かな自然環境を有する南三陸町が、東日本大震災によって甚大な被害を受けました。『MEGURU STATION』のすべての始まりは、東日本大震災が起こった2011 年の春。震災以前から深いご縁があった南三陸町に入ったアミタの社員は、交代でボランティア活動を行っていました。しかし半年近く経った9月ごろ、このまま募金活動やボランティアだけを続けていていいのか。まちの機能が復旧したとしても、過疎高齢化で多くの課題を抱えたままの南三陸町でいいのか。これまでいろんな地域で持続可能な社会づくりに携わってきた企業として、このまちに貢献できることがあるのではないか。南三陸町を見続けた社員たちの心に、変化が訪れます。

そこで浮かび上がったのが、南三陸町における持続可能な地域社会モデルの構築です。まずは京丹後のバイオガス事業に携わって経験を積んできた櫛田が2012年に現地入りすることになりました。

「2012年1月に現地入りして、何もないところから3月に事務所を構えました。最初の数年は、持続可能な社会をつくることをミッションとするアミタの根底にある考えをお伝えしながら、循環型のまちづくりに共感してくれる人を増やすことに尽力しました。森も里も海もある南三陸町。降った雨は、森や山を通って海へと流れていきます。森も里も健全じゃないと、海だって健全でいられない。地域のエネルギーがきちんと循環できれば、そこに暮らす人みんながしあわせを感じ、未来の住民に誇れるまちづくりができることを語り、循環の仕組みを可視化していきました」

林業、農業、水産業。携わる仕事内容は違えども、南三陸町を良い町にしたいという気持ちは、みなさん同じです。話し合いを進めるうち、住民からも循環型のまちづくりに着手したい、という前向きな声が増え、まち全体をブランディングしていく動きへと移行していきます。そのブランディングの中核を担ったのが『MEGURU STATION』。2015年には、回収した生ゴミ等からバイオガスと液体肥料を生成できるバイオガス施設[南三陸BIO]を開設。生成されたバイオガスはエネルギー、液体肥料は地域の農作物を育てる過程で使われることを周知させ、『MEGURU STATION』に対象となるごみを持ち込む日々が始まりました。

ごみが新しい価値を生む仕組み

きちんと分別することで、ごみが有益な資源になり、ひいては我がまちのためになる。『MEGURU STATION』はそんな社会の一員としての充実感はもちろん、手間や面倒を超える価値をも生み出せると、櫛田は想定していました。
「ごみって生きていく上で、万人が関わるテーマです。ですから『MEGURU STATION』にはあらゆる世代の人がやってきます。通常、イベントがありますよ、と言っても家から出てこない高齢の方はいるけれど、ゴミを出さない人っていないでしょ。イベントだとハードルが高いですが、ごみだとハードルが下がる。『MEGURU STATION』でコミュニケーションが生まれ、住民の新しい居場所が生まれていきました」

『MEGURU STATION』の場づくりで意識したのが、最初から全部つくり込まないことでした。薪割り、薪ストーブなどを住民自身が使用できる場面=参加しろを残すことで参加者と運営者が混ざり合い、居場所と出番を感じることで主体的な参画が生まれていったのです。

実際、『MEGURU STATION』の現場に立ち、住民と接した宍倉は、南三陸町で過ごした期間をこのように振り返ります。
「現場で何が印象に残っているかというと、地元のおばあちゃん、おじいちゃんとゆっくりお話ができたことかなと(笑)。分別についてわからなければ、その場でお教えしたり、分別することでどんな資源になり、どんな循環につながるのか説明したり。環境を守ることに興味はあったんだけれど、学んだり向き合う機会がなかった、という人がたくさんいらっしゃることにも気づきました。『MEGURU STATION』に来ること自体を、楽しみにしてくださる方がいらっしゃったのも、すごく嬉しかったです」

さらに『MEGURU STATION』に来れば、普段の行動範囲では会えなくなった方と会えることも。車で訪れた人と、復興住宅から来られた方が「ひさしぶりだね」などと懐かしそうに声をかけ合う姿もよく見られました。ゴミがなくても、来るのが楽しいから毎日来る、そんな方が少なくありませんでした。単なるごみ収集場ではなく「ここにいていいんだ」、とみんなが思える地域の憩いの場になっていたのです。

「自治体3.0」の生駒市から依頼

南三陸町の人々に認めていただき、他の自治体からも注目を集めた『MEGURU STATION』実証実験でしたが、人口1万2000人規模だからできた、震災の被災地だからできた、などという意見も上がりました。人口が異なる他の地域でも、同様の成果を得ることができるのか。南三陸町の実証実験を終了してすぐ、2018年12月には、大阪のベッドタウンである奈良県生駒市、人口12万人の町での追加実証計画が進んでいきました。

生駒市はもともと「自治体3.0」をキャッチフレーズに、公民共創によるまちづくりに取り組んでこられた自治体。「自治体1.0」とは、お役所仕事をこなすだけの自治体。「自治体2.0」とは、市民をお客さまのごとく扱い、そのニーズを満たしていく自治体。対して生駒市が掲げる「自治体3.0」とは、民間事業者や市民などと一緒に、汗をかいてまちづくりを進めていく自治体を意味します。住民が集い、参画する『MEGURU STATION』の場づくりに生駒市長も深い関心を持たれ、2019年12月から実証実験をスタートさせました。

南三陸町に続いて行なわれた、生駒市での実証実験。2019年12月に開始し、コロナの影響で一旦中止した時期もありましたが、2020年2月に無事終了。実験だけで終わらせることなく、現在もプロジェクトは続行しています。

循環を促す場づくりを全国各地に

「生駒市で実証実験をした時に、一番顕著だったのが、子どもたちの変化でした」と櫛田は当時をうれしそうに振り返ります。
「ゲームするより、ここ来た方がみんなもいて楽しいって、学校が終わればすぐステーションにやってくる子どもさんもいて。最初は宿題をしたりしていたんですが、だんだんスタッフの作業を手伝ってくれるようになりました」

高齢者が来ると荷物を持ってあげたり、ごみ出しに慣れない人に分別の仕方を教えたり。最終的には自分たちでシフト表まで作って、アミタのスタッフ顔負けの働きぶりを見せてくれました。またその一方で、薪ストーブの起こし方や薪割りを、子どもたちが高齢者から学ぶ風景も。それぞれ得意なことを活かして助け合い、つながっていく。その場づくりを目の当たりにした生駒市市長から「これはすばらしい。市内全域に広げていきたい」と、常設に向けた実走のご依頼をいただいたのです。目下の目標は、生駒市内で100箇所のステーション設置。それが完了すれば、今度は全国的な横展開へ。『MEGURU STATION』という循環の輪は、さらに広がっていくと想定しています。

「リサイクル事業を強みに、持続可能な社会づくりに取り組むアミタ。理想の絵を描くだけで終わらせず、現場に入って、住民の方とともに諦めず行動し続ける。そんな泥くささが、アミタらしさなのかもしれませんね。これからも現場におられる一人ひとりの気持ちを汲み取りながら、本当の課題はどこにあるのか、アミタが果たすべき役割を考え続けていきたいと思います」と、南三陸市、生駒市で現場に立ち続けた宍倉に、『MEGURU STATION』は様々な気づきを与えてくれたようです。

エコタウンへの挑戦として設置されたごみ回収の拠点が、いつしか住民たちのかけがえのない居場所に。ひとりの力はちっぽけでも、仲間がいれば可能性は無限に広がっていく。人間関係が増幅し、住民自ら地域のしあわせを考えるきっかけとなった『MEGURU STATION』。持続可能な地域社会モデルの構築をミッションとする、アミタの気質とぴったりと重なる重要プロジェクトのひとつです。

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